怖い目の本

先に映画が作られて、監督自らが後から小説にしたそうだが、そう言われないとわからない位『ユリイカ』は上等な小説だった。あとがきの「競争相手は馬鹿ばかりだ」というアオリに近い賛辞にも納得。

犯人の「心理」を追っていけば殺人の「理由」が出てきて、次の行動まで読めるかと思ったら、また読者には知らされなかったもう一つの「因果」が出てきて、そうかそうだったのかーって「感情移入」できちゃって、それまでの異常な行動も「了解」できて終わり・・・っていうサスペンスはもう20世紀的すぎて超飽きたと思っていたからタイムリー。ニヤリ。

「癒し」だとか「自分探し」といった単語で薦められたらゲンナリだったろうけど。いわれのない暴力をうけた瞬間から、自分で自分がどうしようもなくなってしまったっ、そういう時間に真摯に向かいあおうとした思い出なんかを視界の片隅に投影しつつ味わうと読み流せない本。

直前に『寄生獣』を読んでいたのが、絶妙な食い合わせだったかも。そのうち映画も見てみよう。きっとヨーロッパの映画みたいに、その場に居合わせたくないくらい身につまされる間が多い映画なんだろうなー。(妄想)

ユリイカ (角川文庫)

ユリイカ (角川文庫)