食べ方の本

嵐山光三郎といえば、白髪まじりのヒゲを「きゃあ☆ダンディ!」って若い娘に言われたいだけのエロいおじさんだろうという偏見を持っていたのだが。『文人悪食』という、文豪と呼ばれるお歴々の食にまつわる考察のエッセイ集がおもしろくて。ごめんなさいねーおじさまぁ♪って感じ。

しかもいちいち文人の似顔絵のスケッチまで載せている。これがアリガチでヒトリヨガリなヘタウマぽくてヤダナーと思っていたのだが、それぞれ食という側面を照らす事で浮き上がる文人の品性のようなもの(というよりサガ?人格っていうほど高尚じゃないもの)をうまくとらえているように見えて来る。

例えば、岡本かの子。鼻の下の2本線がどうしようもなく醜い似顔絵の横に「世間は薄気味悪い女占い師を見るような目でかの子をみていた」とか「極東手品団女団長のような〜」と続くのだ。ふふふ。非道い。おかげでかの子以外にも、食わず嫌いだった作家の本を読んでみたくなった。

このおっさん自身、これだけ書くには食わず嫌いの作家も、食わず嫌いの作品も目を通さざるをえなかったんだろうなと思えば、罠にはまった読者をいい気味だと思っているに違ひないね。

文人悪食」嵐山光三郎 / 新潮社文庫 780円