ただのきっかけ

本を読む時間が楽しくて、読み始めたのは大学3年をすぎてからのこと。おもしろい本がどうのこうのっていう問題じゃなくて、本を読んでいる状態が好きで読む今のスタイルができてきたのはこの頃。というのも春休みに雪崩で親友が死んで、ぼんやりとした時間が大量にできたから。

授業もなく、たまに就職活動に出かけるだけで、自分の部屋で一番風とおりのよいドア近くのフローリング床に寝っころがってうとうと昼寝ばかりして春夏を過ごしていた。どういうきっかけで何の本を手にしたのかは覚えていないが、暇つぶしに本を読み始めた。手ごろな逃避がくせになったのか、始終頭から離れなかった親友の死をごくたまにしか思い出さないようになっても、本は読んでいる。

自分にとって最もストレスフルな状態のひとつに「読む本がないこと」というのがある。好き嫌いはあっても割となんでも読む雑食性の志向も、自分の生存がかかっていると感じているひとりよがりな危機感のせいなのかもしれない。よく小学生が勝手ルールで「マンホールのおすいを踏んだら死ぬ」とか「影のところだけ歩いて登校しないと失格」とかやってるアレだ。だから「アレが切れるとよぉミニチュアの大名行列が見えるんだよぉ」とかガタガタ言い出してもまともに取り合わないでも別に大丈夫だと。いや、ちょっとツッコミ入れてほしいけど。