ヒモの本

花村萬月の「ぢん・ぢん・ぢん」の読みやすさは何かというと、新宿を舞台にわりとナイーブな勇者(20歳男子)がヒモを目指して冒険していくドラゴンクエストだからだと思う。ホームレス哲学者とかニセオカマのヤクザとかドブスの女編集者とか、えらく濃いジョブシステムだけども、いろんな人に会って、イベントをこなしてスキルを上げて行くのでお育ちの良い読者でもすいすい楽しめる。「イクオは指使いを覚えた。てれれってって〜ん♪」そんなかんじで。

東京出身だけど田舎モノという、最初は誰でもどこかは共感できそうな少年が、新宿でもちょっとしたエロ戦士になっていく。似たような題材として中上健二の「賛歌」が思い出されるけれど、あんなネジレとかヨジレがないのでむしろ爽快。そしてスキルの程度もどんどんインフレするから、最後のほうは毎回手加減しないと相手の女が失神するようになる(笑)。ラスボスも素敵にお約束どおり。たまに理屈臭いのは主人公がそういうお年頃なんだってことで聞き流して、そうそうこういうエロネタが読みたかったのよねーと、満喫しますた。

最近よく立原正秋の古臭いエッチ描写に爆笑していたので、なんだかとっても現代的なおーがにずむ表現に、時代のトレンドを見たような。参考文献に「週間朝日などの週刊誌」とあって、なるほどなー、ああいうとこのエロ記事ぽいよなーって思いながら、自分が持っているセクースのイメージもそういうところが出所なのかと思うと情けな〜い気分になりました・・よ。

ぢん・ぢん・ぢん〈下〉 (祥伝社文庫)

ぢん・ぢん・ぢん〈下〉 (祥伝社文庫)