介護の本

novabosa2004-08-11


文芸春秋の吊広告に亀仙人みたいな顔があると思ったら今年の芥川賞受賞作家のモブ・ノリオ氏。
http://www.bunshun.co.jp/award/akutagawa/
サングラスはかけたままのほうがよろしい、ね。つうか、顔変わりすぎ。

家に落ちていた文芸春秋をめくったら全文掲載してあったので、ついつい読んでしまった。ら、ここ最近読んだ本の中で一番おもしろかった。音楽を目指していたダメ人間が、大麻吸いつつも介護の夜シフトを担当し、おばあちゃんのシモの世話をし続ける。中学生が夜中に大学ノートに書きなぐる独り言のように、段落分けもなく疾走するし。時々介護先駆者としての「ご宣択」で区切られるだけで、戯言と泣き言と弾劾と告白が、YO!とかNIGGER!とか歌詞なんかを挟みつつ延々と綴られる。

陳腐な言葉でいえば、介護ってロックなんだなぁと。オノレが善良で普通だと盲信している無神経なその他大勢を相手に、たった一人であろうとも自分で感じたことを寄り所に立ち向かう気概ってのに、小一時間ほど問い詰められる。中島らもじゃないけれど、こういう「地に足ついた」まっとうな話って、ある意味クソ真面目だと言われても読み入ってしまう。いろいろと息苦しいけど、少しく快感さえ感じるのはマゾいのかなぁ。だって色々とリアルだものなー。

とんがった音楽好きな人、大麻好きな人、介護かじった人、家でごろごろしてばかりでフリーターにしかなれなかった人、金髪にして近所に白い目で見られた人などなど、リンクできる人は結構いるんじゃないかね。読んでみたけど、まぁーコリャコリャ無理!だった人にもちゃんと言い分があるだろう、「大麻とか吸ってるダメ人間だしな」とか「近頃の若者はな」とか「作家としては先がない」とかな。そんな視線をモロに浴びつつも祖母に捧げた時間と気持ちを世の中に晒したモブ氏はオトコマエだわな。おばあちゃんは亡くなったし、次に何か書く必要こそないだろうけれど、シュートな介護の後なら芥川賞っちゅうワークを乗り切るくらいなんちゃないでしょうよ。