古川柳の本

ことばを味わう。ちょこっとずつタイムリーに旨いもんをつまめる飯を「チビウマ」と呼んでいるが、川柳はことばのチビウマ。「武玉川」という、やんわりとナイスな川柳ダイジェスト版のようなもんを田辺聖子が紹介するこの本、ことばのセンスが良い人の手にかかるとこうもおもしろいもんかい。
講釈本にありがちな「こんなことも教えてやらにゃ分からんとは最近の若者とは無学なものよ」といったふうな説教口調と違い、実にへりくだりつつも素直に感想を述べ、的確な補足がついている。こちらも「そうかそうだよそんな感じかと思ったンだよ!」と自分の感性と知性の綱渡りを楽しめる。「最近はこんないいまわしもしないようだが」と聖子オババにいわれれば「本当にもったいないものですなー」と素直にうなずける。
そりゃあ数百年も昔のことばだもの、聖子オババにも分からない場面だっていろいろある。でもそれをひもといていくと、ああ、この場面はいいなぁと思う事がある。何がどうって説明はしずらいんだけれども、こういう風情を解する気分が通じ合うのが楽しい。聖子オババと「ねー!」ってうなづきあいながら、仲良くお茶をのむ、そういう午後を過ごしたい人にお薦め。

武玉川・とくとく清水―古川柳の世界 (岩波新書 新赤版 (791))

武玉川・とくとく清水―古川柳の世界 (岩波新書 新赤版 (791))