車で長旅の本

アメリカを車でずーっと走るのは楽しい。どの方向であれ、大都市を3時間も走れば不毛な土地のど真ん中をまっすぐ走るはめになるのが良い。砂漠の何が楽しいって、あんまりにも不毛すぎて、何をしても何を見つけてもシュールな登場人物になってしまう舞台装置としての完璧さがたまらない。狙っているわけじゃなくて、自然にふるまっているのにすべてがオカシイ。愉快な非日常が日常になる快感。これに病みつきになるようだったら立派なロードムービー派だしょう。(そこのアナタ!アナタもですよ!)
今まで相当にオカシイ旅をやらかしてきたという自負もあるのに、「アインシュタインをトランクにのせて」には完敗した。アインシュタインの脳とそれを取り出した元病理医のがんこ爺と一緒にNJプリンストンから、アインシュタインの孫のいるバークレーまで大陸横断するノンフィクション。しかも、途中でバロウズん家に寄ったりする!しかも、脳みそはタッパウェアの中でぷかぷか浮いている!これ以上にオカシイ旅があるか。ドライバーをかって出たルーザーなライターの心境やら、後々のアインシュタイン関連の取材も含めて最高のロードムービーだ。何が良いって著者の観察眼がツボ。情けない一般人の描写にかけちゃ「ピューっと吹くジャガー」並といおうか。
http://www.webdokusho.com/shinkan/0409/b_10.htm
ここの書評を見ると、ちっとも楽しめてない人が多くてしごく可哀想。本に求めているものも実体験もカブらない人には退屈なのかもしれない。でも、砂漠を延々と運転したことがある人にはオススメだ。つまり、アメリカに住んだことのある成人ほぼ全員にオススメなのだ。

アインシュタインをトランクに乗せて (ヴィレッジブックス)

アインシュタインをトランクに乗せて (ヴィレッジブックス)