お題目①:あなおそろしや集合住宅!

引っ越してから、いろいろな人が家に遊びに来られるようになったのを記念して。都会や集合住宅のおもしろいところっていうのは、絶対に交差しない世界の人たちが背中合わせに暮らしていることで、お互いを知ってか知らずかの綱渡りをしているシュールさだと思うので、そんな感じの3冊を。

蜂の巣よろしく粒ぞろいな家庭が巣くっているとおもいきや、いろんな暮らし方をしてきたいろんな人がたまたまその瞬間に一部屋の中に居合わせていただけだった。という殺人事件の現場の状況が、これまたいろんな家に住んでいるいろんな人の生活導線から暴かれていく。ぢめんに近いところで這いつくばって生きている人の日常が雲つくマンションのある一室まで繋がっている、何本ものそういう導火線を追うだけで楽しい。【売れている作家もおもしろいのだな!と思って次に読んだ本が中学生向けノベルでアウチ。】

理由 (新潮文庫)

理由 (新潮文庫)

  • アパートよりは大きい程度のマンション:「人間の幸福」by宮本輝

ワンフロアに4,5軒で5階建てくらいのマンションで住人の顔も何となく分かる程度で安心感はあるものの、実はどんな生活・性格・性癖を持っているなんか知らぬが仏だったんだなーと、殺人事件をきっかけにお互いのプライバシーに顔を突っ込む事になって初めて気付いたマンション住人達の話。小さいマンションによくもこれだけの人間模様を詰め込んだなってかんじで、ハラハラホロリと出来の良い連続ドラマみたいだから、題名が悪いだけなんだ。【宮本輝ってどれも予定調和でバカみてーだ!と思っていたのにこれは先が読めなくてアタリ。】

人間の幸福 (幻冬舎文庫)

人間の幸福 (幻冬舎文庫)

  • 公団住宅、団地、築30年以上、とにかく灰色なマンション:「燃え尽きた地図」by安部公房

行方不明の男性の捜索を依頼された興信所員があれよあれよとずぶずぶと(中略)・・・で探しているのか探されているのか分からなくなる。思いがけない展開がたくさんあるのに、マンションの話でもないのに、どんより灰色の団地とほんわり明るいレモン色のカーテンしか印象に残らない不条理系小説。団地の一室で待ち受ける奥さんが殺人や蒸発よりも怖い。都会生活の澱を無痛分娩で生みつづけている団地の地母神てか。【題名忘れて他の本買ってもどっちみち同じようなコンクリートの匂いがする本ばかりだからオッケイ。】

燃えつきた地図 (新潮文庫)

燃えつきた地図 (新潮文庫)

ちなみにうちのマンションは、開けてはいけない不条理が部屋ごとにちまちま詰まっているかんじの安部公房スタイル。