人物の本

最近、身近な人間が衆議院議員に理候補することになり、あれよあれよという間に党推薦やら出馬する選挙区が決まっていく様子を聞いていると、つくづく政治はミズモノだと思う。本人でさえ、やる気があるのかないのかよく分からず、立候補したら得なのか損なのか私に聞いてくるが、これくらい政治と縁遠い人生を歩んできた人種のほうがいろいろと都合が良いらしい。俺が出たほうがましなんじゃないかなぁ〜?くらいの気持ちでも、レールに乗れるというのがおもしろい。(他人事だし)
こういうのを時流というのかもしれない。
逆に、世間を俯瞰する目を持ち、教養も人望もあり、理を説き、人に頼られ、奔走しまくっても時流を味方にできずに悲惨な結末をむかえる話といえば「峠」を思い出す。キャラ描写ではズバ抜けたシバリョウが描く河井継之助は、やけにいい男で、ビジョンを持っている分、奮闘実らないのが余計に哀しい。シバリョウにハマる適齢期は中学生くらいだと思うが、「峠」を読んだのは20代も後半。たくさんの回り道をして少しは世間が見えてきているのに、社会と自分の立ち位置と折り合いがつかなくなっている頃に読むと、気分がシンクロしすぎて最後には泣けてくる。
衆議院議員選挙くらいならどうってことないが、河井のように自分の働き如何で身の回りの人間が戦争で全滅していっては悲壮すぎる。文字通り、国の未来を背負っている、そういう仕事をしていた幕末の人物の気分をなぞる名作。一個人として「時代」と袖触れ合うほどに身近に感じられる時、「峠」を読み返したくなる。

峠(上) (新潮文庫)

峠(上) (新潮文庫)