縦社会の本
経営センリャクなんかで「水平展開」といえば、地理的に新規開拓を行うような事を指す。大きく言えば海外進出だとかねの。世界は横へと広がっているイメージを共有しているからこそ通じる言葉なんだろう。
でも、いつの時代かもよくわからない未来?(矛盾した表現な)を描いた「BLAME!」だと、世界が垂直に拡がっている。建設者という名の自動人形がじゃんじゃんと建造物を増やしていって、自分が全体のどの辺にいるのかさえ分からない、そういう世界観の中で自分が誰だかよく分からない主人公がよく分からないミッションを果たそうと上り続ける。
「BLAME!」の気持ち良い点は、よく分からない点をよく分からないままに緻密に描いてしまうこと。セリフも極端に少なく、番外編の「NOISE」で初めてああそうなのかと思う事も多い。でも、設定した未来像なんて、誰にでも分かるように語ろうとしたら士郎正宗のように饒舌になってしまってウザイことこの上なくなるんだろう。気持ちは分かるんだけどね。でも、世界が縦に拡がっているとこを行き来する人の考えのどれだけが、世界が横に広がっている地に巣食う自分達に分かるのやら、と思うと10巻分合わせても少なすぎる情報量(というか状況説明?)にさえものすごいリアリティーを感じる。
詰めの甘いハリウッド映画には、登場人物の全員が登場するまでの間その映画を見ていたとしか思えないくらいものわかりが良すぎる事があって気持ち悪いけれど、そんな風に感じた事がある人は「BLAME!」の作風に好感を持つんじゃないかと思う。
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