お題目②:大事な人に裏切られた時に読む本

少なくとも自分が大事だと思っていた人に裏切られた時というのは辛いものです。そういう時には現実逃避として読書世界に浸るのが、対症療法でしかないとはいえ、快復するまでの時間稼ぎとしては至極有効なので、精神衛生上たいへんよろしい時間の過ごし方でありますです。

精神的には疲弊している毎日を送っていますが、別に誰から裏切られたとかそういう目にあったわけではないのであしからず。どちらかというと、クライアントに過剰な信頼をされているのが、たまりません。朝っぱらからコンビニにあった栄養ドリンクを全種類差し入れに持ってきたりして、親切顔でムチ打つ人たちを見ると、いつかこの人たちを裏切る事があってもまぁいいか、なんて。あははははははははーっ(1オクターブ上)

  • 自虐スパイラルにはまったら:「風紋」by乃南アサ

自分の担任と不倫をしていた母親が殺されてみつかった。殺人事件の周辺には、いわれなき傷を負った人がごろごろいて、それぞれが自虐のスパイラルに落ち込んでいく。特に中学生の主人公真裕子が、裏切りだとか疑いといったアプリケーションを強制インストールされた人が陥るあらゆるパターンの考えたくないけど考えてしまう出口のない思考にハマる。同じような体験をした時期に読むと、真裕子に限らず様々な立場の登場人物のそれぞれの考え方がどれもリアルに感じられる。そして加害者というのは、どれだけ思慮深そうでも自分の事しか考えていないという点もリアル。最後に真裕子が立ち直っていくから明るい希望の見える本だという感想も聞くが、どちらかというと癒されない傷を負ったものがどれだけ早く膿を出し切るかという作業を延々と綴っている。それを巧みだと評価できるくらいになれば、自分の膿出しも終わる。ただ、作家が何を体験した後に書いているのか、気になるところでもある。【続編の「晩鐘」も分厚い上下巻、見つけたら即買い】

風紋〈上〉 (双葉文庫)

風紋〈上〉 (双葉文庫)

ここ数年だとか数ヶ月の付き合いの相手に裏切られても大した事ないよな、と思えてしまうくらいスケールの大きい裏切りがいくつか描かれている長編。日本の香道を再建した女性が数奇な運命をたどって最後は一人で死ぬまでを描ききる。どんな相手でも許すことのできる一種宗教的な境地というか、名家の子女が持つ泰然とした心構えを身につけたいと思わずにはいられない。地球温暖化が・・・、という人に向かってあと100万年もしたら氷河期だからって応えられるようなスケールの大きい人にね。【良家のお嬢様話は宮尾登美子の十八番なので他の本でもその空気はわかりますわー】

伽羅の香 (中公文庫)

伽羅の香 (中公文庫)

トップクラスの詐欺師二人が最後の仕事をすることになった。基礎から応用編まで詐欺テクニックを披露しながら、詐欺はスポーツなんだと思わせるくらい軽快に最後の大仕掛けへと話がスピーディーに進んでいく。これだけ仕事に掛けている人たちに騙されないわけないよなと。あっちの世界の仁義が分かったような気になって、騙された人への哀れみなんてカラリと捨てて真剣勝負なんだから勝ち負け両サイドあんだよねあっはっはーって酒場で肩を叩きあっているような気分になれる。【映画では鬱病の詐欺師役をニコラス・ケイジが(笑)。あの顔じゃネタバレな気がする】

マッチスティック・メン (ヴィレッジブックス)

マッチスティック・メン (ヴィレッジブックス)

毎回ちょっと陰鬱な視点でしか本を薦めない、ほんさる。またそのうち次のを書きますよ。