ただの愚痴

故あって立原正秋を手に取る順に読み漁っていて「春の鐘」という駄作にあたった。立原作品を好きな人が好きそうな「萌え属性」を上手くまぶしてこその流行作家だと思うが、他の立原作品と比較しても、コレをアレしてをコウしたら売れるという安直さが鼻につく。大雑把にいえば「古美術」「古都」「古風な男女」と並び揃えた設定から、薄化粧してきちんとした着物姿で朝ご飯を用意する薄幸な美人の色気の細やかな描写まで、ベタな中にもベタすぎておもしろいという洗練を見出せない。

好きな食べ物は毎日食べても多分大丈夫という神経の持ち主なので、ありがちな「萌え属性」それ自体にアレルギーはないのだが、なんでこんなにもいただけないと思ったのか。今度は「萌え属性」だけで構成されていそうな「一騎当千」を読んでみた。

アニメ化もされた爆乳女子高生バトルマンガ。裂けやすい服とパンモロとゆれる乳が三国志の武将名とセットでやってくる。例えば呂蒙子明は一見綾波風?で、青いオカッパ頭に眼帯で私服はメイド服。関羽セーラームーン。主人公の孫策のメンタルは悟空。真面目な三国志ファンを敵にまわしそうなキャラクター設定はあえてアリとしても、てんこ盛りの「萌え属性」がインストールされただけで起動していないようで、過大な期待は裏切られてしまった。女子高生に転生しても三国志と同じ筋書きをたどる運命に抗えるかどうかというアイデアには、もっとオツな使い道がありそうなものの、そういう星の下の主人公の将来が気になるようでそうでもない。三国時代の天下統一という目標が高校を〆るという小粒な目的にまでサイズダウンしているのに、ぼこぼこ人が死ぬのだもの。大本のストーリーのゆるさに、途中からは露出する乳首だってどうでも良くなってくる。

筋はどうであれ、楽しい枝葉末節に溺れてみたいと思っているのに、どちらもストーリーのフレームの弱さが気になってしまう。「だから何でそんなことしてんの?」と、我に返るヒマもない位にどうしようもない話が読みたいというニーズも少しは分かってほしい。

一騎当千 (5) (Gum comics)

一騎当千 (5) (Gum comics)