ウマメシの本

料理マンガの連載が下手に続くと、薀蓄に凝りだしたり、リアクションにハマったり、とにかく経済性を強調したり、珍妙なオリジナルレシピが暴走したり、料理マンガかどうかさえ怪しくなったり・・・するのを見ていると、マンガという形態がそもそもお題目に適していないんじゃないかと思う。

というのも、嵐山光三郎の「頬っぺた落とし う、うまい! 」を読んで、活字のほうがぴったりくると思ったから。美食家の大学教授が数々のウマメシを味わう短編集で、読んでいるほうの頬っぺたが落ちそうになる。こだわり屋の主人公のリアクションは「う、うまい」と言うだけ。でも、薀蓄でもなく、ウマメシがうまいワケがそこにある。料理小説のマスターキートンと言いたいところだが、この旨さはあくまでも活字にこだわりたい。