変人観察の本

女性月刊誌CREAが、読み物としてもおもしろかった頃に「カップル特集」というのがあった。古今東西の有名人カップルを100組紹介したもので、当時女子高生だった自分達は休み時間にこの特集号を肴にああだこうだと議論した。その中で全員一致の最悪な男として宮沢賢治が選ばれ、最良のカップルはそれぞれに好みが分かれた。

自分はダリとガラのカップルが気に入った、というより若かりし頃の二人のツーショットが気に入ったのを覚えている。それぞれに個性が強い二人が互いになくてはならない存在として添い遂げた例としては、20世紀最強の「われなべにとじぶた」カップルなのに、やけにいい男に写ったダリも傍で微笑むガラもごくフツーに自然体で幸せそうだった。

サルバドール・ダリが愛した二人の女」では、年老いたダリがかわいがったイギリス人モデル(歌手)のアマンダ・リアがダリと出会ってからの生活を語る。ヒッピーカルチャーとパリ社交界を股にかけ、70年代からのカルチャーアイコン満載な昔話をよくこれだけ覚えているな〜と、変なところに感心せずにはいられない。「友達の友達」の噂のようにして、ダリについて知ることも新鮮だ。ただ、たまに時系列が前後したり、どうでもいい細かい話をしたあとにお茶を濁すような表現になると、「ああ、書いてもよいところとか、話したいところだけ話してるんだな?」と邪推したくなる。「下訳?」と思ってしまうくらいにまずい日本語訳ともあいまって、ドキュメンタリーとはオツなもの。世紀の変人カップルの維持継続の裏舞台を覗いた気になれる。

サルバドール・ダリが愛した二人の女

サルバドール・ダリが愛した二人の女