志士の本

「ゲームばっかりするから殺人事件をおこす」みたいに低レベルな解釈を言う人には、むしろ「ゲームでもやってオツムを鍛えなさい」といいたくなるけれど、中学生くらいの年代にどんな本を読んだのかは、その後の人生をどんな「気分」で過ごすのか左右するような気がする。同じ本を読んでもピックアップする部分は違うから、出方は違って来るんだけれど。

幕末や戦国、中国の歴史小説やら伝奇小説を読み漁った姉弟の場合。弟は万事につけいい加減なアル中なのに、誕生日になれば「おめでとうッス、兄者〜!」と乾分が全国から駆けつける、暑苦しい奴になった。姉は育ちの良さを出世に使うわけでもなく、三十路を超えてなおブラブラしていても、未来にわくわくしていられる能天気な奴になった。比較的まじめな親を持つ二人がこうなったのは、ええかげんな歴史小説に出てくる破天荒で格好いい奴らについて毎日しゃべり続けたせいじゃないかと。読んで心酔して、ひとり「かくありたい」と思ったわけではなくて、友達の噂話みたいにして「それもまたよし」と認めたから、こう堂々と「年甲斐もない」大人になったのじゃなかろうかと。
そして、多分二人とも自分の子供に、似たような本を薦めちゃうんだろう。

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)

新装版 世に棲む日日 (1) (文春文庫)