いい人に困る本

おきにいりのブログに誹謗中傷コメントが増えて閉鎖になってしまった。意見の相違とやら以前に、すでに抱いている反感を正論の皮かぶせた薄皮饅頭にして、とにかく大量に口に突っ込んで黙らせよう・・・ってかんじの手口が気に入らない。それでもなんとか咀嚼して飲み込んで、「まずかったけど一応食ったよ」って対応するライターは偉いなぁと思っていた矢先の閉鎖だ。ハァ。

本当に嫌いなら遠巻きにしていればいいのに「私何か間違った事言ってますか?」(なぜか「私は正しい事言ってますよね!」って肯定文で言わない・笑)ってズカズカやってくる人との距離感が不必要に近くなってしまうから、物書きの職業でブログをもつのは大変だなぁと思う。と同時に匿名性の保たれるライターという特殊な位置にいた自分は温室育ちだとも思った。(試験問題を書いているのだから責任は持っても特定される情報は公開しない)

自分は正しい、自分は間違っていないとハナから疑ったためしもない「いい人」に、死ぬほど困った目にあわされる「火の粉」を読んだばかりなので感慨もひとしお。言っている事も理屈にあっているし、見た目も悪くないという隣人の過度な親切に「?」と思うセンスが生き死にの別れになる。誰が正しいのかなんて分からない中で、自分が何を信条に物事を判断していくのか、家族のそれぞれがどんな気持ちで何を秤にかけ、どう食い違っていくのか、日常生活の目線で緻密に描かれていてリアル。この本で一番怖かったのは、「ふんんんんんっ!」っていう声(?)。心底自分が正しいと思っている人が相手に鉄槌を下している時には、動物並みのカタルシスというかエクスタシーを感じるんだね・・・。

一家惨殺殺人事件で冤罪になった元被告が引退した裁判官と隣あわせの家に引越して来るなんて、そうそうないよな・・・と思ったけど、ネットで考えれば誰かに粘着するなんて簡単な事。あぁ便利。便利ついでにいい人フィルターとか、つけたい。

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)