外交の本

酒は飲めないけどモテモテだたーよ


アカの他人から聞くのであろうとも、夢の話と旅の話と若い頃の自慢話は大抵おもしろい。多分、話している内容よりも話している本人がおもしろい場合が多いから、先に本人に惚れこんじまえば後は何を聞いてもおかしいっちゅうおいしい状態になるんだろ。

身長が足りなくてタマに傷があるけれど羽賀研二似のオトコマエ、勝海舟が年とってからファンを前にして、まるでTVタックルのように幕末からの政争やら外交などをベラベラ話したものをまとめた「氷川清話」を読んで勝サマに惚れた。上は宮様徳川様から、下は江戸の強盗や女郎屋まで見知った人の話をあれやこれやと、西郷や坂本なんかの同年代からいきなり歴史上の傑物まで世間話のようにして評価する。大体はアイツは大した奴だ(って評価する俺もスゲエ)けど、そんなアイツにこんな事言っちゃったよ俺は‥(ヤベエっしょ)ってな展開が多い。評価と自画自賛が彼の言い草とないまぜになって、ナイスな隠居ジジイと縁側でいつまでもダベってるみたいで楽しい。

特に人付き合いのセンスが抜群で、家や藩、国同士のつつきあいがどうなろうと、ちゃっちゃと危ない橋も渡ってのける外交話がカッコいい。面子が道理が方針がどうのだとか、バカ及び正直者が考える「正論」施策には、勝サマのようなヒラメキが足りないのだと思える。「外交なんて隣の奥さんをいぢめるようなやり方じゃいけないよ」なんて茶化しながら、いろいろ頑張ったけど「大金持ちにはなれなかったなーアッハッハー」て笑う勝サマはカッコええ〜。

氷川清話 (角川文庫ソフィア)

氷川清話 (角川文庫ソフィア)