聖徳太子の本

後々から歴史を振り返ってみて、明らかにこの人はオカシイなと思う人のひとり、聖徳太子。彼の持ったビジョンが今から考えてもえらかったとか、本人が突出して優秀だったとかはおいておいて、周囲の人から見たらえらい迷惑だったろうなぁという話が「爆撃聖徳太子」。「日出ずる処の天子」より妙にリアリティーがあります。ラディカルな改革を実行する事と、その論拠だとか手法を周囲に納得させる事ってのは似て非なる作業だというのは、最近の国会見てても分かる事。周囲が理解できなくても、勝手に走り出すぶっちぎりのキティガイとして聖徳太子が描かれ、巻き込まれる妹子と同調して人生まるごと疲れ切る。「うるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁぁぃっ」ってわめいてばかりの「世界一いやな」貴人を上司に持ち、どこまでついていけるのかハラハラドキドキのハートフル遣隋使ストーリー。

ネタやスジは秀逸なんだけど、小説としてはいろんなもののバランスが悪いんじゃないかのぅというのが実は素直な感想。マンガだったら惚れこんだろうに、と思うと複雑です。ライトノベル差別主義者じゃないんだけど、誰かマンガ描いてくれたら良いのにと思わずにはいられない。

爆撃聖徳太子 (ハルキ・ノベルス)

爆撃聖徳太子 (ハルキ・ノベルス)