コイバナの本

小池真理子は特に好きじゃないのだけれども。読み出すとずずーっと足をとられるような具合で、読まずにはいられなくなる数少ない作家ではある。

登場人物の発散する魅力の傾向だとか、日本の文化人(?)を取り巻くある種の階級への憧れとか、70年代に青春を過ごした人たちの持つ時代の匂いだとか。そういった、団塊の世代には馴染み深い要素が、その子供世代の自分にはどうもなじめないというか、親の若い頃のアルバムを見ているような一種の居心地の悪さがぬぐいきれない。

自分がもう30年早く生まれていたら諸手をあげてファンになっていたかもしれないけれど、いや、そういう問題じゃないのかもなと「欲望」を読むと思う。小池流のコイバナに三島由紀夫が絡められているこの作品の最後で、「天人五衰」のラストと重ねたマンガみたいな演出に浸ってしまうところには参った。どうも世代格差だけじゃなくて、自己陶酔をどこまで許すかという好みの問題らしい。だからこう全編恥ずかしげもなく三島マンセーなんだ・・・。

とはいえ、また小池真理子を読むんだと。美意識に欠ける美人を愛でるのは楽しいから・・・って、これも三島な論理。結局ミイラ取りがミイラになって一本取られた。

欲望 (新潮文庫)

欲望 (新潮文庫)