お題目:変な家族列伝

さいころから「ウチは特別なのよ」と言われて育って、大きくなってみると親が言わんとしていた事と違った意味でなるほどウチは変わってるなと気づく。親の天然ぶりに気づくようになったとは、オレも大人になったなと。でもこの中で育ってしまって自分では気づけない天然さが残っているのだろうなと思うと、恐るべしっ「家族」。

そんな最小単位の小宇宙を好きな様に作っちゃっていいよという許し(=結婚)を得て「えーまじでーうほほほほ!」となっているこの時期に、ツッコミ不在の総ボケ家族列伝を紹介。

The山田家 1 (ヤングサンデーコミックススペシャル)
1、「the山田家」阿部潤 ヤングサンデーコミックスペシャル/各918円

お酒を飲むと2頭身キャラになる父:トムと毎日ハイパーにご機嫌な主婦:花子、この親にどうしてこんなまともな息子が?というみちるの三人家族の大変な日常をつづったマンガ。最初は変に力が入って不思議ちゃんを気取っている風味がだんだんこなれて絶妙に破天荒というかサイケデリックウルトラCのナンセンス日常生活ギャグがイチロー並みの打率で決まり出す。

なにかと自分の家族にそっくりなので「山田家の良心=みちる」の視線で楽しんでいたら、オットには「君は花子だよねー」と言われてそんなに母親と自分が似ているのかと愕然とした全7巻。
【正しい楽しみ方:無意味にオサレな登場人物のファッッソンに注目】

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)
2、「楡家の人びと」北杜夫 新潮文庫/上下巻各660円

精神病院を営む成金一家、楡家がブイブイいわせている戦前の様子から戦中、戦直後までを家族それぞれの視点から描いた名作。むしろアナタ達のほうがビョーキじゃないのってくらい偏った性癖の各人についてのやけに詳しい描写には嘲笑というよりはしぶとい民草への生暖かいまにゃざしが介在している。

登場人物は総ボケだが、淡々とてらいのない地の文が素直に楽しい。程度の低いツッコミ漫才に飽きた現代人の脳に染み入るユーモアセンスが素晴らしい。
【正しい楽しみ方:実写化した際のキャスティングに終始悩む】

群青の夜の羽毛布 (幻冬舎文庫)
3、「群青の夜の羽毛布」山本文緒 幻冬舎文庫/600円

ちょっと神経質なかんじがほっとけない女の子「さとる」。と、その家族。なんかちょっと変だなと思っている事がどんどんもっとオカシイ原因へとむかう、家族の謎解き大会。だいたい変な家族のペースに慣れてきそうなものだけど、この本の場合は逐一ギョっとする。

読み終えて遠くなってから思い返せば、フィクションだよそりゃイキスギよって言えるけれども、家族という突っ込み不在の最小単位の王国に呑まれてしまっているので、いっしょにキモい風呂に漬かってしまう。本上まなみの出た映画版はラストがちょっと違ってるぽい。
【間違った楽しみ方:なぜかエグニカオリの本だと思って見つからないでイライラする】