似非科学の本

今年はカードマジックのプロ養成コーチが教えるマジックレッスンDVDというものの制作に関わったおかげで、超絶技巧のマジックを目の前で見る機会にちょくちょく恵まれました。タネが分かったってできるものではないスね。タハ〜。このくらいできれば中堅サイズの新興宗教の教祖くらいにはすぐになれそうだと思いました。マジシャンよりよっぽど儲かると思います。軌道にのったらさっさと他の中堅教団とM&Aとかしちゃうと数年でミリオネヤーになれそうです。

先日の韓国クローン学者の嘘論文サイエンス誌掲載事件のように、人をだまそうと思って全身全霊をかけている人には騙されて当たり前だなと、思った年でした。来年は、顧客視点で気持ちよく騙せる人になりたいです、というのはコッチの話。実際、進歩している科学の最先端なんて精査できる人が地球上に数人しかいない場合、マジックほどの技術や努力なくして簡単にだませると思います。少し時代が経てばすぐにバレるのが難点だけど。

そんなほほえましいお話が「千里眼事件ー科学とオカルトの明治日本」につづられています。明治時代に一大ブームになった透視だとか念写がメディアを通じて科学的大発見→(急降下)→三面記事となるまでの顛末です。確認の為の実験方法なんて、本当に笑っちゃうくらい詰めが甘くて、周辺人物の愛憎劇だとかも含めるとヌルさ倍増です。でも、昔の人だしね〜って笑っている自分達もいつか未来の人に笑われるんだろうなと思うと、不思議とこそばゆい感じですよ。


千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)

千里眼事件―科学とオカルトの明治日本 (平凡社新書)

聖徳太子の本

後々から歴史を振り返ってみて、明らかにこの人はオカシイなと思う人のひとり、聖徳太子。彼の持ったビジョンが今から考えてもえらかったとか、本人が突出して優秀だったとかはおいておいて、周囲の人から見たらえらい迷惑だったろうなぁという話が「爆撃聖徳太子」。「日出ずる処の天子」より妙にリアリティーがあります。ラディカルな改革を実行する事と、その論拠だとか手法を周囲に納得させる事ってのは似て非なる作業だというのは、最近の国会見てても分かる事。周囲が理解できなくても、勝手に走り出すぶっちぎりのキティガイとして聖徳太子が描かれ、巻き込まれる妹子と同調して人生まるごと疲れ切る。「うるさいうるさいうるさぁぁぁぁぁぁぃっ」ってわめいてばかりの「世界一いやな」貴人を上司に持ち、どこまでついていけるのかハラハラドキドキのハートフル遣隋使ストーリー。

ネタやスジは秀逸なんだけど、小説としてはいろんなもののバランスが悪いんじゃないかのぅというのが実は素直な感想。マンガだったら惚れこんだろうに、と思うと複雑です。ライトノベル差別主義者じゃないんだけど、誰かマンガ描いてくれたら良いのにと思わずにはいられない。

爆撃聖徳太子 (ハルキ・ノベルス)

爆撃聖徳太子 (ハルキ・ノベルス)

ただの自慢

冠婚葬祭による召集で、久しぶりに同世代の従兄弟が集まった。幼少期をバラバラの県で過ごし、あまり近しい環境で育ったわけでもないのに、この血筋はかなりエグいシンクロをみせることで有名。ツッコミもボケもエグいのが分かっているので、身内のみの場所ではスパーク必至となる。

早速、「松蔭祭りに行ってさ」「あ、命日先月27日だったもんね」って、ツカミもどうかと思うけど普通そう日にちとか返さないよね。「オレは松蔭カレー食ったよ」なんて言っている三人がなぜか同時期に「竜馬がゆく」を読んでいる偶然。「世に棲む日々」のあとは「花神」だろうとか、機内で読むなら「酔って候」だろうとか、今年萩に二回も行ったという従兄妹も可愛い顔してるのになぁ〜。最近なつかしくなって「新撰組血風録」を読み返して昔ほど楽しめなかった自分は、幕末話をちょっと遠目に眺めてる、と。でも「最近は何にハマってる?」と聞かれれば「いや、むしろ日露戦争」「あー、こないだNHK児玉源太郎特集でさ〜!」「見た見た=3」やっぱり同じペースに。

日露戦争くらいまではまだ日本も必死だからおもしろいよ」「まだまだ維新の心意気ってことかぁ」なんて、披露宴ぽくないことこの上ないが、主役が骨の髄からの歴史オタクなんだから、そういうテーブルを作った事を喜ぶに違いないのな。引き出物は皮製の文庫本カバーだったし、いたれりつくせりじゃね。

ただの自慢

自宅から駅まで歩く間に本屋が4軒ある。まがりなりにもオフィス街だからなのか、それぞれキャラが違うので、毎日たのしく群雄割拠しているもよう。自宅から近い順に紹介。

ブックオフ:24時閉店。都内最大級とあるが、要するに郊外店のサイズ並み。何かを探しに行くと面倒くさいが、探していないのに見つけるとうれしいという、百円ショップのようなもの。友達の家の本棚だと思えば、すごい使える。【使いやすさ:ドンキレベル】

あゆみブックス:じゅうたん敷きでBarns&Nobleのような雰囲気の良い書店。周辺では新規参入店らしい。漫画の品揃えが微妙にマニアックで、レジ前の平積みの企画がたまにおもしろい。お買い物系雑誌の立ち読みと新刊漫画購入に最適。【居心地:上級コンビニレベル】

明屋書店:いわゆる駅前書店。ビジネスマンの好きそうな本がたくさん。よく見ると某宗教系の本の本棚やら平積みが‥。【オッサン汁:新橋レベル】

④あおい書店:床が汚いし、客が読んで戻した本がぐちゃっとしてたり本棚で本がナナメになってたり、人手の回りきってない感じがあゆみブックスと対照的。でも、読みたかった本がザクザク見つかるので、変な人件費はかけずにこの路線で行ってほしい。新書やオモロネタ本、IT関連のハウツー本とまあ、ちょっとでも眺めたい本が多い。【散財危険度:本屋レベル】

やっぱり激戦区なのか、③以外は24時閉店。それとも最近は常識なのかしらね。夜中に本屋って。

「ホンサル」は当分書いてないけど、ホンヤサル=本屋コンサルってことで。今日は以上。ええ、まぁ、ちょっと現金の持ち合わせがないので本屋でカード切ってきちゃいましたよ。なので当分あおい方面には向かわない事にします。

ただのため息

書店では見つからなさそうだけどカウンターで予約するのもちょっとな、という本をamazonでまとめてオーダーしました。新刊じゃなくて古本でみんなみつかったので一冊300円程度なのは良いのですが、3つの店舗に分かれたせいもあってか本の代金3500円に対して手数料と送料が3700円・・・。それでも新刊を11冊まとめてamazonで買うよりは安いのでオーダーしましたけどねぇ、何かやりきれない感じもします。3つの店舗それぞれと振込みや配送のやりとりをしないところだけは楽ですが。

で、続々と商品が届いているのでもうニコニコです。「皇国の守護者」9巻全部のほか、「爆撃聖徳太子」「巨乳ドラゴン」、まぁ書店で書名を告げる必要がないだけでも感謝しろってかんじですかね。

どっちかっていうと、ニヤニヤですが。なにか。

育ちの悪い本

桐野夏生が描く変人はなんでこんなに真に迫っているのだろうかね。「I'm sorry,mama.」の主人公アイ子は登場した時から、育ちの悪さから来る汚れ感と不気味さを漂わせている。他人に害を及ぼすレベルのズボラさが恐ろしいと同時に、怖いもの見たさで目が離せない。また、登場人物がそれぞれずさんな性格をしていて、そのだらしない部分こそがストーリーを紡ぎ出す原動力のようになっているのがおもしろい。

一人のキャラクターを描き出すのに、分析し尽くした見解でもってできるだけ細やかに表現するのは、ただ単なる凝り性というだけで何の得にもならないのだと思えてくる。桐野夏生の場合は、おしゃれの達人が時折見せるハズしテクニックのような洒脱さで、ダメなものやワルイものまで鮮やかにシュッと描いてしまう。死角のないキャラ立ち。そしてこういうキャラならこういう人を引き寄せるに違いないという、周辺キャラの選択の的確さ。オチはありがちかもしれないが、それはそれで小劇団の脚本のようで良作だと思った。


I'm sorry,mama.

I'm sorry,mama.

ユング系の夢見がちな本

MKさんの差し入れ、萩尾望都の「バルバラ異界」は夢を見ている少女と夢にダイブする案内人と彼自身の家族を含めた過去と未来が入り乱れる・・・と、好みの筋書きテンコ盛なのに「マイノリティー・リポート」だとか「セル」だとか「12モンキーズ」なんかをチラチラ思い出して、イマイチのめりこめないのは、展開の速さのドタバタ感がハリウッド映画っぽいからなのだろうか。で、ほほうと思った頃に最終巻が来る。

非常に惜しい。なんかもう、痒い。

過去をいじると未来が書き換わってしまう、その差異を確認できる主人公の立場って一体・・・そうなるのも分かるけど、ねぇ、みんな読んでなんとか言ってよ。バックツゥザフューチャー見た後にガタガタ文句垂れるような無粋な事をしてみたくなっちゃうんだけど、おもしろい作品ではあるんだよ。う〜。

バルバラ異界 (4) (flowers comics)

バルバラ異界 (4) (flowers comics)